structure支部短信報告「鉄構工業組合との懇談会を終えて」
東北支部技術委員会委員長 八ッ賀 英幸
1.はじめに
JSCA東北支部技術委員会では、平成14年2月・3月に、福島県鉄構工業組合・青森県鉄工連協同組合とそれぞれ懇談会を開催いたしました。日ごろ構造設計者に対して鉄骨製作工場(以下FAB)が感じている問題点や疑問点、さらに改善要望等の話合いを行なう機会となりました。各回3時間におよぶ懇談会の中で、構造設計者として考えなければならない事項などが拝聴出来ました。その内容をいくつか報告いたします。
2.設計図書について
FABからの意見の中に、設計図書の不備を指摘する声がありました。
ひとつは、「告示 平成12建告第1464号」によって、通しダイヤフラムとはりフランジの溶接部について、鋼板の厚みの内部で溶接しなければならなくなりましたが、設計図によっては、ダイヤフラムの板厚も溶接方法も書かれていない図面があるという事でした。また、勾配付き梁部材と冷間成形角形鋼管柱の取合いなど、FAB側が悩むところの詳細図が無く、どのようにして製作すべきか分からない設計図書もあるとの事でした。
告示第1464号によって、通しダイヤフラム板厚内にフランジ溶接部が収まっていない場合は、建築基準法不適合となり、手直しを強いられます。FAB側では、この告示によって、材料寸法の公差も加味しながら、ダイヤフラムの板厚を決定しなければならない状態になっています。積算段階でダイヤフラムの板厚等を考えて積算した結果、見積金額が他社よりも高くつき、受注できないケースなども出てきているそうです。
さらには、特記仕様書の鋼材材質に、鋼板・形鋼はSN材と記載してあるにも係らず、製造されていないH形鋼(裏サイズ)を用いている設計図書や少量の山形鋼やみぞ形鋼までSN材を使用する設計図書も存在するそうです。このあたりは、構造設計者側の知識不足から来る面もあり、反省させられる点であります。
次に、アンカーボルトが基礎ばり配筋と干渉して定位置に無く、台直しを行なっている物件がかなりの頻度で存在するという指摘です。鉄骨の柱脚部については、設計段階での重要ポイントと認識して、配筋が混雑すると考えられる場合は、その収まりを検討しておく必要があると思われます。また、工事の段階では、配筋・形枠の施工精度を良くするための工事管理や設計監理を行ない、鉄骨精度と同レベルの躯体精度の確保を行なう努力によって、改善されると思われます。
3番目は継手の問題です。特に大ばりの高力ボルト接合部についてですが、同材質同サイズであっても物件によってボルト径・スプライスプレート厚が違っているのが現状で、FAB側から、高力ボルト接合部について、JSCA内だけでも統一できないでしょうか?という意見がありました。高力ボルト標準接合部に「SCSS-H97鉄骨構造標準接合部 H形鋼編」鉄骨構造標準接合部委員会編が出版されていますが、この中においても、同材質同サイズの鋼材に対して、M20・M22など2種類のボルトサイズの記載があり、構造設計者が自由に選択できるようになっています。このことが逆に、FAB側の混乱を招いているように思われます。一部の例外を除いて、高力ボルト接合標準継手を決めることは出来そうであり、JSCA内だけでも、ルール化することによって、FAB側の品質確保や効率化に貢献できそうであります。
3.設計監理について
私たち構造設計者は、施主からの要求性能に対して品質保証する義務があります。しかし、構造担当者が不在の設計事務所では、建物躯体に対する要求性能品質の認識の甘さから、構造事務所に実施設計業務のみ発注し、設計監理業務を発注しない場合があります。FAB側からも、設計図書に対する質疑を出しても回答が来ないケースがあり、設計図書の中に構造設計者の明記をお願いしたいという意見もありました。
4.おわりに
平成12年の建築基準法の改定によって、基準法の考え方も性能設計に変化しており、構造設計者は建物の要求性能を、施主との協議で決定する必要が出てきています。このような意味からも、構造設計者自身が技術の研鑚を行ない、構造設計者による設計・監理業務が重要であることを社会に認識させ、構造設計者の社会的知名度を上げて行くことが必要であると思われます。

